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「保健師って病院の人じゃないの?」5回転職した私が見つけた、もう一つの看護職

/ 16 min read

目次

「あなたの病院に、保健師さんって何人いますか?」

そう聞かれて、答えに詰まる方は多いんじゃないでしょうか。

そもそも、「保健師って病院で働いている人なの?」「行政の人じゃないの?」「健診の時に話を聞いてくれる人?」イメージがバラバラで、何をしている職種なのかピンとこない。それが普通の感覚だと思います。

私自身、看護学生時代は「保健師=行政の人」という、ものすごくぼんやりしたイメージしか持っていませんでした。教科書には保健師のことが書かれていたはずだけど、夜勤がしんどい看護師として働き始めるよりずっと先の話で、現実味がなかった。

でも今の私は、5回の転職を経て、地域包括支援センターで保健師として働いています。3年目に入りました。

この記事では、「保健師ってそもそも何?」という素朴な疑問に、私自身の経験を通して答えていきます。

卒業4ヶ月前の1本の電話で、人生が変わった

時は遡って、看護系大学4年生の冬。

実は私、看護学生時代はあまり真面目とは言えない学生でした。「大学に入った」ことで満足してしまって、実習も大嫌い。特に母性看護学は単位がギリギリのライン。今思うと罰当たりなくらい、ちゃんと向き合っていなかった。

そんな私が「やってみたい」と思っていたのは、京都の総合病院。「生涯で一度、京都に住んでみたい」というふわっとした動機で採用試験を受けて、内定をもらっていました。卒業したらそこに行くんだろうな、と思っていた頃。

卒業の4ヶ月前。研究室でいつものように先生と話していると、先生から。

「誰か保健師いない?」

何の話?と聞いてみると、「知り合いの健診機関で特定保健指導を立ち上げるから、保健師を探してるんだって」と。

私の頭の中は、「???」です。

「えっ、健診機関にも保健師っているの?行政しか知らなかったけど」
「特定保健指導の立ち上げ?何それ、面白そう!」
「看護師の求人はいつでもあるけど、保健師の求人はめったに出ないし、これいい機会じゃない?」

その日のうちに、「詳しく聞かせてください」と返事をしていました。

そして京都の総合病院の内定を辞退して、健診機関の保健師として社会人スタートを切ることになります。

あの1本の電話がなかったら、私は今ここにいなかったかもしれない。

健診機関の保健師って、何をする人?

健診機関で働き始めた私のミッションは、「特定保健指導を立ち上げる」こと。

特定保健指導というのは、健康診断で「メタボの可能性あり」とされた人に、生活習慣の改善をサポートする仕組みです。当時、国の制度として始まったばかりで、健診機関側にとっても新しい挑戦でした。

立ち上げ期間は、思っていた以上に楽しかった。

特定保健指導のシステムを作っている県外の会社の方が来てくれて、操作方法をレクチャーしてくれる。そのシステムを使って、社内の職員相手にデモで保健指導をする。新しい仕組みが少しずつ形になっていく感覚が、本当に好きだった。

「あ、保健師って、こういうこともするんだ」

学生時代の「行政の人」というぼんやりしたイメージが、初めて立体的な仕事として見えてきた瞬間でした。

余談ですが、実はこのあと、立ち上げの中心だった先輩保健師が突然退職することになって、私も健診機関を去ることになります。その時のドタバタ劇は、また別の記事で書きますね。

産業保健師、地域包括、保健師って意外といろんな場所にいる

健診機関の次に転職したのは、IT系企業の健康管理室。いわゆる「産業保健師」と呼ばれる仕事です。

駅前のオフィスビルに通勤して、社員の健康相談に乗ったり、休職している方の産業医面談を調整したり、健診結果をもとに面談をしたり。

ちょっとバリキャリ気分も味わえました(笑)。面接が駅ビルのカフェで行われて、トライアスロンをやっているバリバリ体育会系の上司が「これは雑談?面接?」みたいな空気で話してくれて、楽しかったのを覚えています。非常勤採用だから緩かったんでしょうね。

その後、結婚で県外の田舎に引っ越したことで、訪問看護→地域包括支援センターと道は続いていきます。

つまり、私が経験した保健師の働き先だけでも、

  1. 健診機関(特定保健指導など)
  2. 企業(産業保健師)
  3. 地域包括支援センター(高齢者の総合相談・介護予防など)

の3種類があります。これに加えて、もちろん行政(市町村・保健所)もあるし、学校保健(養護教諭は別資格ですが、保健師資格を持つ方も)や、最近は民間の健康サービス会社でも保健師の求人がぽつぽつ出てきている。

「保健師って、こんなに働き方の選択肢があるんだ」というのは、自分で転職するたびに発見してきた感覚です。

看護師と「決定的に違う」3つのこと

じゃあ、保健師と看護師は何が違うんでしょう。私が実感している3つを書きます。

1. 「治す」より「予防する」が中心

看護師は、目の前の症状や病気に対応する仕事です。点滴、処置、観察、申し送り。

保健師は、その人が病気になる前、もしくは、病気と長く付き合っていく中で、生活がより良くなるように関わる仕事です。

例えば健診で「血圧が高めですね」と引っかかった人に、「じゃあ、お味噌汁の塩分を少しだけ減らしてみませんか?」と一緒に考える。これが特定保健指導の一場面です。

派手さはないけれど、「この人の人生に小さな変化を起こしている」という手応えがあります。

2. 「点」じゃなく「線」で人を見る

病院で看護師として働いていた時、私は「入院」という点で患者さんと出会っていました。

「この人、入院前はどんな生活をしていたんだろう?」「退院したら、どう暮らしていくんだろう?」と想像することはあっても、答えを知ることはほとんどなかった。

保健師の仕事は、その「線」の部分を見る仕事です。

地域包括では、まだ元気な高齢者の介護予防教室から、認知症の進行で生活が成り立たなくなった方の家族支援、最期をどこでどう迎えたいかという相談まで、その人の「人生の線」に並走していく。

これが、保健師の醍醐味だと私は思っています。

3. 夜勤がない(基本的に)

これは、夜勤がしんどくて転職を考えている方には大きいかもしれません。

私が経験した保健師の仕事、健診機関、産業、地域包括、は、すべて日勤のみ・基本は土日祝休みでした。

訪問看護も保健師資格でできますが、こちらはオンコール対応があるので例外です(私はこの負担で離れました。その話もまた別の記事で書きます)。

「夜勤がない」だけで、人生の質が大きく変わる。これは経験した人にしかわからない感覚かもしれません。

もちろん、いいことばかりじゃない

正直に言うと、保健師の仕事も完璧ではありません。

  • 病院に比べて給料が下がるケースが多い(夜勤手当がないぶん)
  • 医療技術から離れることで、看護師としての勘が鈍る感覚
  • 保健師の求人自体が圧倒的に少ない(看護師の100分の1くらい?体感)
  • 行政保健師は採用試験のタイミングが固定で、思い立ってすぐ動けない

特に最後の「求人の少なさ」は、転職活動でけっこう悩むポイントです。

それでも私が「保健師でよかった」と思えているのは、上に書いた3つの違い、予防、線で見る、夜勤なし、が、自分の生き方や価値観にしっくり馴染んでいるから、だと思います。

それでも保健師を選んだ、いちばんの理由

これは最後の本音なんですが、

私が保健師という仕事を続けている、いちばん大きな理由は、

「人がどう生きていくか」に寄り添える

ということです。

地域包括で「最期はどこで迎えたいですか?」と話す時、私の頭の中には病院での看護師時代、訪問看護での在宅看取り、産業保健師での休職者面談、健診機関での予防指導、5回の転職で経験したすべてが線でつながっている感覚があります。

点じゃなく線。治療じゃなく人生。それが保健師の仕事なんだ、と。

もし「夜勤以外の道」を探しているあなたへ

この記事を読んでくれているあなたが、もし今、夜勤がしんどくて、看護師を辞めたいけど他の道がよく見えなくて、という状況なら。

保健師という選択肢があることだけは、ぜひ知っておいてほしいと思います。

行政だけじゃない。健診機関、企業、地域包括、訪問看護、最近では民間サービスまで。働く場所はいろいろあります。

求人は少ないけれど、ゼロじゃない。「保健師 求人」で検索してみるところから始めてもいいし、看護師として働きながら通信制大学で保健師資格を取る道もあります。

人生の選択肢は、知らないとそもそも選べない。

このブログで、私自身の経験をたくさん書いていきますので、ヒントになれば嬉しいです。


次回は、産業保健師として働いていた時に出会った「無断欠勤が続いて、家を出たけど会社に行けなくなって、公園にいた部長さん」の話を書こうと思います。あの時、私は保健師として何ができたんだろう、と今でも考えている話です。

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